責められしとげ既に我の中にあり 膿みて太りて横たわりたる 自信など一瞬のうちになくすもの ビジネスメールが我をはげます 知らん顔して通り過ぎる黄ライフ 下取りに出しし子かと見送る

転居の夜 野に近く住みし一年が 我に息継ぎ(ブレス)を教えしと知る 差し入れし手に身体中こすりつけ 不安示せる引越の猫

沢に立つミズバショウ見し 帰宅して 負けじと白き猫すっくと立つ

大声で我を呼びたる猫ありて 発信源が戻るべき場所 職業で笑顔の量のこの差かな 「東 営業 × 西 管理人」 何ゆえか罪悪感あり 平日の午後デパートを泳げぬ鰯 デパートの喫茶室にてぽってりと開く花々 我はスタバへ 産めずして育てず過ぎぬ十年は 我を太らせ…

温泉で 身体ひねりて洗いしは 舐めて治しぬ獣(けもの)の姿勢(かたち) 疲れいて 布団の中から手を伸べて 握手求むる夫の掌(てのひら)

雪に耐えいのち保ちて春の夜に 矢になり渡る白い若猫 前籠にゆでたまご10コ 立ちこぎで疾く教会へ復活前日 アンデレになりし笑顔の青年は 軽く会釈し「お先に」と言い 片時も膝を離れぬ我が猫は パンを食べればパンくずだらけ 髪乾かせば毛だらけになる

買い置きしドライフードを出す折に 愛猫の眼がきらり☆光りぬ 画教室 和を尊びぬ老講師は リタイアの後、画家となり来ぬ 微笑みて「ゆっくりでいい」と幾度目(いくたびめ) エスカレーターに立ち向かう母娘(ぼし)

もう用は済んだとしっぽピンと立て 梅ばち見せて去る深夜風呂

色求め 走れ!東北新幹線 こげ茶 黄色に 白はピンクに 新宿のエスカレーター昇り来る 無表情なる幾万の顔 倒れたる人を囲みて肩さすり 服かけ側を去らぬ人々 「ありがとう」関西訛りで言う我を バス運転手 目を上げず見ゆ 受難週 我が筆跡に罪を見し うなだ…

引越の日取り決まりて改めて愛しく思う ガッデムの松

「ついつい」と松の梢に黒いとり つい、してしまい悔いるは何ぞ

もぐもぐと回転寿司より出てきたる 笑顔のカップル 青年と祖母 負荷もなく身体動かすだけならば 鍛わる訳なし こころも同じ ロシア語のようだとユーミン言いし名が わが現住所 桜待ちいる 黄砂降り くしゃみ 山菜 朝寝坊 桜咲かねど 北国に春

ヘリコプター乗りて夫が数えるは 鹿の頭数 強風の中 機上より観測データ取る夫 待てる吾の眼も鳥瞰図になる 電話鳴り「高校時代の...」と夫(つま)の友 あとから案ずる力なき声 「あとがき」を「ぐっときたわ」と母は言い 「涙が出た」と妹は言う

偏頭痛 伝い歩きぬ顔覗き 「ごはんはまだ?」と邪気なく問う彼 歌づくり 茶杓の銘づけ 似たるなり うつせみを出て添えてみる言(こと)

越して来し我を支えてくれしひと 越しゆく北へ 返す間もなく

型抜きし人参くずのありようは 見守る祖母のまなざしに似て 玉子焼く 20個分の殻を割り 錦糸玉子の春の川ゆく

処分すは されないものとの 再会と。 けだし名言、されどまやかし

凍えずに溺れずに笑み舞う人ら 面差し似たり フィギュア・シンクロ

買ってきしビニールの中の猫草よ しずくが示す「もっと伸びたい!」 春分の日 朝寝朝風呂遅ごはん 窓の外には白き岩手山 慣れぬ地で 読めるが読めぬ活字たち 教員移動の新聞特報

春休み 放たれし子らのスキップに われまでうれし 関わりなけれど

ざわついて 皮膚、関節も 毛羽だって 侵入阻む 恋にウィルスに

新幹線 降り立ち頬の冷たさに これぞわが地の空気ぞと知る

のぞきいし子ら小さき手打ち合わせ 連結決まりし はやてとこまち

北国の三寒四温は潔し メリの次には ハリが来たれり 三月は 冬と春との技くらべ 吹雪のち晴れ 「春ちゃんの勝ち!」

猫野原 どちらを見ても猫ばかり 「遅かったねえ」とわが猫(こ)手まねく

彼の耳 左右対称ならざるは 激務の証し テトラアンテナ 道凍り 重心ずれしを楽しめり 自転車かごには たまごといちご

雪かきて できし黒道 4階の窓から写すモダンデザイン 雪かきて 返り眺むる黒き道 狭まりうねり半時間の人生(とき) 降りたての雪すくいしは易しこと 踏み固められし雪の心地よ 二人所帯 家まで続く靴跡に もう帰ってるとわかる雪の日 雪の原 ぎしぎぐざじ…

泣き濡れし顎にはさみしヴァイオリン 舞台の君は なんと幼き 涙ふき まなざし高く こころ揚げ 響き渡れよ 9才の音 ネクタイをほめし教授は饒舌に。 聞きし教師も「わしのは...」と言い。

追うは梅 追わぬは桜 去りゆくをこころに落とすときのあるなし

三つ足の我が猫香箱組し折 ひとやま足らずを「ほかした」と言い