2007-01-01から1年間の記事一覧

ふと我に返るごとくの夏の夕 ここにこうしている我は誰(た)ぞ

「決めたこと」ソプラノの主は微笑みて 山百合のごと とめるすべなく 我が夫(つま)のスリッパの音聞き分けつ 小部屋を巡る人間ドック

その日来てコイルとなりて廻りたる 猫を獣医師は「てんかん」と診る

花柄のネッカチーフがしわくちゃの 小顔包みしスナフキンばあちゃん 「昨年はカラ梅雨だった」と言いみれば 「それが岩手(ここ)の。」と二巡目の初夏

猫15夫40夏の夜に 同じ姿勢(かたち)で夢野漂ふ

たちぎれし つるの先には涙球(なみだだま) 伸びゆく筈を つめてふくれて 失った右後ろ足 動きいる 右耳の痒み「掻くのは俺や」

教会の子ら遊び弾くピアニカの 賛美歌の次に「♪アカジニシロク...」!? 北に住み 西の月刊情報誌 取り寄せし訳を 書店主は問わず

前かごをパンくずで満たし岸に立つ 少年の背に「だけど続ける」

遠き地の駅前にありて 我が父の 我が母のような背中見る朝

「ここどごだぁ!?」運ばれて来し鉢に乗り 着きしベランダ 吠える蟻たち 風呂で聞く 急ぎ去りゆく線路音(ね)は 頭(かしら)を北にとる「はるか」なり

子 育てず 過ごす四十路(よそじ)を 「飛び級」と言われ 泡立つ我がこころなり

北国に連れてこられしミズナラの 硬き冬芽はついに開かず

舐められぬうしろくびだけ粗い毛を 撫でながら知る余地のぬくもり 近すぎて自分の親にできぬこと 他人(ひと)にはできて成り立つ輪あり 「母である自分で他人(ひと)に接する」と 言う友の瞳(め)は少女のままに 甘すぎず風味豊かな栗ケーキ 持たせし友の…

ひだまりに毛皮干す猫 伸ばす足 桜ひとひら肉球に添う

わがままになりし我が身に気付く夜 「自由」業たる功罪を見る

十字架にことりとまりて弟子の数 放たれし空 ペンテコステの 「笑ってる」聞きて見下ろす膝の猫(こ)は 口角上げて見上げていたり 熱風に乾きし茶髪 群れ嫌い 離れし30本ゴミ箱に落つ

強風にあおられ白き一片は ますぐに天へ昇りゆくなり 教会に向かう窓より夕暮れに 十字架の西辺光るを眺むる

「時がいる!手足放って寝るまでは」 どんぐりまなこでわが猫(こ)言いたり

待ちかねて開花宣言出し朝は 「出たね」「やっとね」で通じる挨拶

責められしとげ既に我の中にあり 膿みて太りて横たわりたる 自信など一瞬のうちになくすもの ビジネスメールが我をはげます 知らん顔して通り過ぎる黄ライフ 下取りに出しし子かと見送る

転居の夜 野に近く住みし一年が 我に息継ぎ(ブレス)を教えしと知る 差し入れし手に身体中こすりつけ 不安示せる引越の猫

沢に立つミズバショウ見し 帰宅して 負けじと白き猫すっくと立つ

大声で我を呼びたる猫ありて 発信源が戻るべき場所 職業で笑顔の量のこの差かな 「東 営業 × 西 管理人」 何ゆえか罪悪感あり 平日の午後デパートを泳げぬ鰯 デパートの喫茶室にてぽってりと開く花々 我はスタバへ 産めずして育てず過ぎぬ十年は 我を太らせ…

温泉で 身体ひねりて洗いしは 舐めて治しぬ獣(けもの)の姿勢(かたち) 疲れいて 布団の中から手を伸べて 握手求むる夫の掌(てのひら)

雪に耐えいのち保ちて春の夜に 矢になり渡る白い若猫 前籠にゆでたまご10コ 立ちこぎで疾く教会へ復活前日 アンデレになりし笑顔の青年は 軽く会釈し「お先に」と言い 片時も膝を離れぬ我が猫は パンを食べればパンくずだらけ 髪乾かせば毛だらけになる

買い置きしドライフードを出す折に 愛猫の眼がきらり☆光りぬ 画教室 和を尊びぬ老講師は リタイアの後、画家となり来ぬ 微笑みて「ゆっくりでいい」と幾度目(いくたびめ) エスカレーターに立ち向かう母娘(ぼし)

もう用は済んだとしっぽピンと立て 梅ばち見せて去る深夜風呂

色求め 走れ!東北新幹線 こげ茶 黄色に 白はピンクに 新宿のエスカレーター昇り来る 無表情なる幾万の顔 倒れたる人を囲みて肩さすり 服かけ側を去らぬ人々 「ありがとう」関西訛りで言う我を バス運転手 目を上げず見ゆ 受難週 我が筆跡に罪を見し うなだ…

引越の日取り決まりて改めて愛しく思う ガッデムの松

「ついつい」と松の梢に黒いとり つい、してしまい悔いるは何ぞ